“ユーティリティが扱いづらい”その悩み、シャフトが原因かも?
スチールのNS950WFとDG95とカーボンシャフトを比較
広島市安佐北区のゴルフ工房 スルーザグリーンです。
春以降、ありがたいことにアイアンのリシャフトやオーダーのご依頼が続き、ブログの更新が滞っておりました。
ようやく作業が落ち着いてきましたので、また少しずつ記事を更新してまいります。
ちょっと懐かしいユーティリティのリシャフトをご依頼いただきました。
今回はユーティリティの振りにくさ、球筋のバラつき…何かしっくり来ない。
その症状の背景としてが意外に多い
- 「アイアンやウッド類とのシャフトの不一致」
- 「スイングのタイプとのシャフトの不一致」
クラブフィッター&クラフトマンとしての視点から、実際のリシャフト事例を通して解説します。
シナリに違和感?DG系にリシャフト
今回のご依頼の内容です。
アイアンのシャフトにダイナミックゴールドをご使用中。
「ユーティリティのシャフトのシナリ感がアイアンと合わない気がする。」
とのことで、ダイナミックゴールド95(通称DG95)をご指定でリシャフトです。
メーカーページはコチラ→ダイナミック ゴールド 95 ユーティリティ用

NS950WFからDG95へ
上:現在使用中
運動Type-A向きのシャフト
- NS Pro950GH ウェイトフロー / Sフレックス
↓
下:新たに装着する
運動Type-D向きのシャフト
- Dynamic Gold 95 40インチ ハイブリッド用 / S200フレックス
日本先行発売モデルのDynamic Gold 95は、90g台の軽量でありながら、従来品DGと相似的な剛性カーブにすることで、軽量シャフトにも関わらず、DGと同等のねばり感やコントロール性を再現。
DG系ってやつですね。
※DG MIDがラインアップに加えられましたが、MIDは別物ですのでご注意を!
同じスイングで同じ使い方をするクラブは、近い動きをするシャフトにしておくと、
クラブに合わせることが減り、シンプルになります。
リシャフト前のスペック (1UT)

UT1をリシャフト
元のスペック
- ヘッド名:ブリヂストン ツアーステージ X-UT 101w
- シャフト名:NS Pro 950 GH WIGHT FLOW(これ以降 “WF”表記)
- グリップ名:ゴルフプライド ツアーベルベットラバー M60R
- 番手:1UT
- ロフト:17度
- 長さ:40.75インチe(e:エンドまでの実測値)
- 重量:372g
- 振動数:276cpm
- 換算フレックス:RA
- 抵抗値:276.7

ツアーステージX-UTヘッド重量
ヘッド重量:225.2g
シャフト重量:92.4g
グリップ重量:52g
グリップは再利用。
長さは元の長さに出来るだけ近く。
スイングウェイトはD1まで。
ユーティリティはシャフト先端径に注意です。
今回のリシャフトでは、シャフトのTip径が9.0mm → 9.4mmへ変わります。
しかし、元のヘッドのネック内径はおよそ9.1mm。
そのままでは装着できず、ネックの拡張加工が必要になります。
このようなケースは意外と多いものの、DIYや専用設備のない工房では対応が難しいこともあります。
ユーティリティには取り付け出来ないシャフトがある
先ほども書きましたが、付け加えるとシャフトの先端径が
- 8.5mm (ウッドのシャフト径 ユーティリティウッドなどに)
- 9.0mm (ユーティリティ専用シャフトに多い)
- 9.4mm(アイアンシャフト・アイアンと共用シャフトに多い)
っと3種類シャフト径があります。
言うまでもなく、穴より太いシャフトは無加工では装着出来ません。
- ネックの穴径8.5mm シャフト先端径9.0mmは、ネック内径の拡張加工を行えば装着可能
- ネックの穴径9.0mm シャフト先端径9.4mmは、ネック内径の拡張加工を行えば装着可能
- ネックの穴径9.5mm シャフト先端径9.0mmは、スペーサーを取り付ければ装着可能
- ネックの穴径9.0mm シャフト先端径8.5mm〜8.6mmはスペーサーを取り付ければ装着可能
反対に大き過ぎるネックの穴に細いシャフトを装着すると、接着強度が足りずに抜けてしまう危険性があり、こちらも装着できません。
- ネックの穴径8.5mm シャフト先端径9.4mmは装着不可
- ネックの穴径9.5mm シャフト先端径8.5mm〜8.6mmは装着不可
1.は、FWやドライバーにユーティリティ用のシャフトを入れて欲しいとお持ちになるケース。
2.は反対にネックの穴径の大きいユーティリティにウッドのシャフトを装着したいとお持ちになるケース。
入らないものを無理やり入れると
時々、どこで装着されたかは分かりませんが、無理やり装着されているクラブがやってきます。
危険例:1 シャフト削りパターン
シャフトをサンダーやヤスリでゴリゴリ入るところまで削ってある訳ですが、シャフトの剛性が大幅に失われて機能しませんし、折れます。
そして、歪に削られたシャフトによって装着アングルが滅茶苦茶な場合がほどんどです。
危険例:2 大幅にカットパターン
逆に、ネック内径が大きいヘッドに対し、細い先端径のシャフトを無理に合わせようと、設計を大幅に超えてTipカットされているクラブも見かけます。
シャフトには「パラレル長」と呼ばれる接着に適した安全な範囲があり、これを超える加工は強度・機能ともに大きく損なわれます。
「折れたシャフトを再利用して短尺〜」みたいな動画もたまに見かけますが、、、
「チップが少し太い」(パラレル長を超えている)とか言いながら装着されているを見かけると、ゾッとします。
シャフトの先端近くにプリントが、あり得ないくらいネックに近い状態で装着されているものは要注意です。
無理やりが原因で起こるトラブル
- ラウンド中に折れて同伴者にケガをさせたり
- 練習場で折れて設備を破壊してしまったり
- 剛性不足で全くシャフトが機能しない
- ロフト角やライ角・フェースアングルが別物になってしまう
これらで、満足いく結果が得られないばかりか、とても危険です。
ネック内径の拡張が必要だと分かった段階で、ご依頼いただく方が結局お得です。
重さにも注意
Dynamic Gold95
品番:UDG95IS-40-HTS2
40インチのパラレルTipのユーティリティ用シャフト。
名前が「95」なので、装着時の重量が95gの気がしますが、
カタログのカット後の想定重量は100g。
今回の場合のように95gのシャフトから95gへのリシャフトで、一見重量が変わりそうにないが、
実際にはNS Pro950GH WFの方は名前の通り「ウェイトフロー設計(長い番手ほど軽くなる設計)」で約92g。
DG95はユーティリティ用でパラレルチップのディセンディング設定なので、カットの少ない今回の1UTではシャフトの装着重量が約101g。
※ディセンディング設定
ディセンディングは、フローの反対で「重量の降下」を意味しています。
長いシャフトを切って番手の長さに合わせるため、長い番手ほどシャフト重量が重く、短い番手ほどシャフト重量が軽くなる。
名称からのイメージよりも実際は重量差があるので注意。
ディセンディング設定の場合、短い番手では逆にカタログ値よりも装着重量が軽くなる場合もあります。
剛性設計を比較してみます。
話を戻します。
オレンジが元のNS Pro950GH WF
ブルーが今回装着したダイナミックゴールド95
他2本はユーティリティ用のカーボンシャフトを比較用にグラフ化しています。
簡単にグラフの説明をします。
- グラフの右側がグリップ側で、左がヘッド側になります。
- 上部へ行くほど剛性が高く(硬い)下に行くほど剛性が低い(軟かい)
- インパクトにかけて、右から左へシナリ戻っていきます。

HYシャフト剛性設計の比較
※今回のトゥルーテンパーDG95とNS Pro950GH WFの手元の剛性値は参考値です。
オレンジとブルーとで、主に手元部分と中央部分の剛性に差があることが分かります。
手元が柔らかく、中央部分の剛性が高いオレンジから
手元が比較的剛性が高く、中央部分が軟かいシャフトに変更されたことが分かります。
キックポイントって?
よく気にされる「キックポイント」ってどうなっているでしょうか?
- オレンジのNS Pro950GH WFがカタログ上は「中調子」
- ブルーのダイナミックゴールド95がカタログ上は「中元調子」
グラフを見ていくと、?ですね。
NS Pro950GH WFの中央部分(センター)が最も剛性が高い。
ダイナミックゴールド95の中元部分も剛性が高い箇所です。
「間違っているのか?」
というと、そうではなく。
測定方法や測定基準、ラベリングの基準が異なっている事です。
他の記事でもご紹介していますが、当店ではキックポイントはスルーです。
- キックポイントの測定方法が複数あり、どんな方法をどのメーカーが採用しているか分からない。
- キックポイントのラベリング(どれを何調子とするか)基準が各社・ブランドでバラバラ。
これらのため、キックポイントは比較に使用することが出来ません。
同じメーカーの同じブランドのシャフトのみを使用する場合を除き
キックポイントは参考になりません。
ですのでシャフト選びの際に、目的にあった剛性設計になっているかを知っておくことが必須です。
今回はアイアンで使用している「ダイナミックゴールドと合わせて使用した際の違和感の解消」
これが目的ですので、剛性設計が反対なNS Pro950GH WFからより近いDG95へのリシャフトに賛同となる訳です。
この後に、「しっかりとフルスイングする」のか「飛距離を合わせるスイングのみ」なのかなど、使い方によって、全体の硬さが十分であるか検証します。
ピッタリと合う場合もありますし、使っていくうちに使い方が変わる方もおられます。
「ティショットで使う予定はなかったけれど、打てるようになればホームコースのあのホールが攻略できるかも…」
過不足の場合は、同じような剛性設計がされていて、剛性値の高いシャフトをテストしていく様になります。
部分的に「もっと先端にしっかり感が欲しい」「手元にシナリがもう少し欲しい」「もっと粘りが感じたい」などの場合も、元の剛性値から必要に応じれる剛性値を持つシャフトを探していきます。
繰り返しですが、シャフトを選ぶ際には、シャフトの剛性設計・剛性値を知っておくことが必須な訳です。
リシャフトしてみての変化
同じ長さでグリップ再利用。
この条件で仮組みを行いました。
結果、スイングウェイトは1ポイントと少し重めになりました。
理由として
・シャフト重量がDG95の方が重い。
・剛性設計のグラフでも分かるが、DG95の方がTip径が太く剛性が高いため、先端がやや重い。
その結果、バランスポイントがDG95の方がTip寄り。
今回はスイングウェイト:D1を優先するご指定があったので、2mmほど短めにカットしました。
剛性設計を踏まえて実物を比較
シャフトの比較
Tip径が9.0mmと9.4mmでDG95の方が太い。

DG95とNS950WFの比較
- シャフトのファーストステップの位置は、NS Pro 950GH WFの方が僅かに先にあります。
- ステップの間隔はNS Pro950GH WFの方が間隔が狭く、細いTipから早く太くしようとする設計。
- シャフトのロゴプリントの位置では、目視で分かるぐらいNS Pro950GH WFの方がシャフト径が太くなっている。
リシャフト後のスペック
ヘッド名:ブリヂストン ツアーステージ X-UT 101w
シャフト名:NS Pro 950 GH WIGHT FLOW(これ以降 “WF”表記)
グリップ名:ゴルフプライド ツアーベルベットラバー M60R
番手:1UT
ロフト:17度
長さ:40.75インチe → 40.5インチc
重量:372g→ 382g
振動数:276cpm→ 266cpm
換算フレックス:RA→ A
抵抗値:276.7→ 279.2
ヘッド重量:225.2g
シャフト重量:92.4g → 101.4g
グリップ重量:52g
グリップの下巻きテープを螺旋1巻 → 手元1巻+螺旋1巻に変更
シャフトの重量分 総重量が増え、振動数は剛性設計の違いによりやや数値が下がった。
ユーティリティにはスチールか?カーボンか?
ユーティリティのシャフト選びで失敗する方の内で、多く見られるのが
- 硬いシャフトが良いのでスチールシャフトにする
- ヘッドスピードが速く無いので、軟かいカーボンシャフトにしよう
- 重量フローが大事だからアイアンとFWの間の重さのシャフトにしよう
- 調子(キックポイント)を合わせておけば大丈夫
もう一度剛性を測定したグラフを見てみます。

HYシャフト剛性設計の比較
グリーンはフジクラ スピーダー TR ハイブリッド 95/Sフレックスです。
90〜100gのハイブリッドシャフトでは、剛性設計のグラフの様に概ねカーボンシャフトの方が剛性が高い傾向にあります。
この重量帯に限らず、同じ重量のシャフトであれば、概ねカーボンシャフトの方が剛性が高いものが殆どです。
重量を増やして柔らかさも出したい場合は、スチールシャフトを選ぶ選択肢も有効です。
重量はアイアンとFWの間の重さ
大筋は間違っていません。
が、ユーティリティはネック内径の話でもわかるように、設計が他のクラブよりも多様です。
- 形状(フェース形状やフェース高、ソール形状など)
- ロフトの設定
- ヘッド重量の設定
- FPの設計
ユーティリティアイアン・ユーティリティウッド、レスキューにハイブリッドなど
名称も様々です。
これは、使用用途がプレイヤーによって異なるからとも言えます。
- ロングアイアンの代わり
- フェアウェイウッドの代わり
- どこからでも使う
- アプローチも?
かたやアイアンだと思って使用している方。
かたやショートウッドだと思って使用している方。
同じヘッドや同じシャフトを装着するのが良いでしょうか?
同じ重量のシャフトにならないと考えています。
どのように使いたいのか?
これが重要です。
考えずに選んでしまうと、やりたい事が出来ずに気を遣わなければならないクラブになってしまうかも?
調子(キックポイント)を合わせておけば大丈夫?
剛性のグラフでも見てきましたが、大丈夫じゃないです。
キックポイントの表記を合わせることで、むしろバラバラになることも。
先ほどと同じですが、
どのように使いたいのか?
これが重要です。
やりたい事を行いやすくするには、どこがシナルシャフトが良いのか?
無数にあるシャフトを1本1本打って探しますか?
調べて選びますか?
あわせて読んでおきたい!おすすめ記事
12,000人が読んだ“ユーティリティ用カーボンシャフト比較”──なぜそのシャフトがユーティリティで選ばれているのか?についての記事はコチラ

まとめ
今回のようにリシャフトでは、シャフトの重量・剛性・取り付け条件など複数の要素が絡み合います。
一見些細な違いに思えても、シャフトの先端径や設計思想の違いが、実際のパフォーマンスや使い心地に大きく影響を与えます。
とくに今回のダイナミックゴールド95は、NS950WFとは剛性配分も重量設計も異なり、「アイアンと合わせて違和感をなくす」という今回の目的に対して、非常に理にかなった選択となりました。
結果として、アイアンやその他のクラブとの繋がり・フィーリングが明確に改善された印象です。
ゴルフクラブは、「やりたいこと」が「フィッティング」と「クラフト」でかみ合って、初めて機能すると考えています。
今回のようなリシャフトを通して、クラブへ“違和感”が“信頼感”へと変わる体験を、これからも少しずつですがお届けしていきたいと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
気になることがあれば、お気軽にお店までご相談ください。
あなたの一本、もっと活きる形に。
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